QandA:キャップ系のつば(ひさし)芯について
今回は、お問い合わせを多くいただく、キャップやハンチングなどに用いられるつば(ひさし)芯について、解説してきます。
つば芯については、数年前にもブログで書いたことがありますが(「ひさしの芯について」参照)、
今回はいつもお世話になっている帽子用資材商社の百々株式会社様から情報提供をいただき、
大幅に加筆・修正した内容になっています。
つば芯についてはなかなか表立った情報が少ないですが、専門家からのアドバイスにより非常に有益な内容となっていますので、ぜひご一読下さい。
今回の内容については、百々株式会社様に大変お世話なりました。この場を借りて、感謝申し上げます。
YOUTUBE動画による解説をアップしました。ブログには書けなかった、ひさしの作り方について解説していますので、よかったらご覧ください。
Table of Contents
つば芯とは、何か?
そもそもつば芯とは何でしょうか?
一般的なキャップなどのつば部分は、帽子の本体部分に比べて固くなっているかと思います。
これは、内側にポリ芯やペフ芯と呼ばれるプラスティックの成型板などがはいっているためです。
このようなつば芯を入れることで、しっかりとしたカーブを保持したり、つばが下に落ちずに状態をキープすることができます。
上記のようなつば芯入りのタイプのほかに、不織布でつばを作成する場合もありますが、そちらは後述します。
つば芯の種類
イケガミ帽子工房で取り扱っているつば芯は、主に以下の3点になります。
- ポリ芯
- PK芯(ポリ芯とペフ芯を張り合わせたもの)
- EVD(EVH)芯
ポリ芯
一般的なつば芯として使用しているものが、ポリ芯になります。
ポリ芯は、プラスティック(ポリエチレン)の板を金型で抜いて成型したものを、仕入れています。
そのため、つば芯の形は、仕入れ元の金型の形に依存しています。
以前、仕入れ元を見学させてもらったことがありますが、壁一面に並べられた金型がとても美しく印象的でした。
つばの形は、用途によって様々です。
つばの長さ、横幅、つば先のカーブの形(丸い、四角いなど)などをご指示いただくことで、できるだけご希望に近い形をご提案します。
弊社でもよく使用する形については、ある程度の在庫を保持しています。
ポリ芯の種類
ポリ芯には大まかに以下の分類ができます。
- 形状
- 厚み
- 色
形状
形状には、フラットタイプとY型タイプの2種類があります。
フラットタイプは、真っ平らな形状、
Y型タイプは、やや湾曲した形状になります。
フラットタイプとY型タイプでは、生産行程がことなります。
フラットタイプは1枚のプラスティック成型板できています。
Y型タイプでは、2枚の成型板を貼り合わせています。
その際、上面側と下面側の収縮率を変えることで、曲がった状態をキープしやすくしています。
補足:追加で曲げる加工として、フラットタイプを曲げるのをNY、Y型をよりきつく曲げる加工をWYと呼びます。
厚み
つば芯の厚みです。
イケガミ帽子工房では、1.8㎜を標準の厚みとしています。
他に、1.0mm、1.5mm、2.5mm厚などもご用意可能です。
色
つば芯の色は、黒、白の2色になります。
表生地の色味によって使い分けています。
PK芯
PK芯は、薄めのポリ芯に柔らかい素材のペフ芯を貼り合わせた芯になります。
ペフ芯は弾力がありフカフカした芯材ですので、あまり硬さを出したくはないが、厚みは欲しいと言った場合に使用します。
PK芯には、PK、WPK、SPKの3種類があります。
PK<片面ペフ>
PKは、ポリ芯に片面のみペフ芯を貼り合わせたものになります。
PK芯を使用する場合は、ペフ芯がつばの表側か裏側かの指定いただきます。
PKは、ポリ芯とペフ芯の厚みによって、以下の種類があります。
品番 規格(ポリ/ぺフ) 色
PK-8 0.7mm/2.0mm 黒・白
PK-10 1.0mm/2.0mm 黒・白
PK-13 1.3mm/2.0mm 黒・白
PK-815 0.7mm/1.5mm 黒
WPK<両面ペフ>
WPKは、ポリ芯の両面にペフ芯を貼り合わせた(サンドイッチ状)ものになります。
品番 規格(ポリ/ぺフ) 色
WPK-71 0.7mm/1.0mm 黒・白
WPK-710 0.7mm/1.0mm 黒・白(EVA入りポリ芯を使用)
SPK<EVA入りポリ芯(S芯)+片面ぺフ>
SPKは、通常のポリ芯にEVAを入れてより柔らかい素材に仕上げたポリ芯(S芯)を使用しています。
EVAを入れたポリ芯は、曲げても筋が入らないと言った特徴があり、
収納のために折り曲げたいと言ったニーズの場合に使用されます。
品番 規格(ポリ/ぺフ) 色
SPK-11 1.1mm/2.0mm 黒
SPK-815 0.7mm/1.5mm 白
EVH芯、EVD芯
ポリ芯とペフ芯の中間的な特徴を持っているのが、EVH芯、EVD芯になります。
EVH芯は、フラットタイプに使用します。
EVD芯の最大の特徴は、熱をかけながら曲げることで形状記憶性があり、大きく湾曲させた状態をキープできる点です。
しっかりとつば芯を曲げたい場合などに使用します。
つば芯の作り方
つばを作る際は以下の手順で行います。
- つば表と、つば裏を裁断。
- つば表とつば裏を中表で縫製
- 袋状になった表生地をつばに沿わせてくるみ、ひっくり返す
- つば芯の付け根を縫製して、完成
この辺りは、動画の方がわかりやすいかと思います。
7:23 あたりから、解説をしています。
つば芯を使わないつばの作り方
つば芯を使わずに、つばを作成することもあります。
キャップやハンチングではあまり行いませんが、キャスケットなどでは一般的かも知れません。
つば芯を使用しない場合は、不織布(パネロン芯)をはり、厚みを持たせてやります。
前述の通り、つば芯は仕入れ元の金型の形に依存していますが、
つば芯を使用しない方法であれば、どのような形にでも対応可能で形の自由度が高いです。
つば入りの芯にくらべて、状態をキープしずらいため、あまり長いつばには向いていません。
また、つば芯を使用しないケースはY型の形状はできません。
つばの先端部分にワイヤーを入れることで、擬似的な形状記憶性を持たせることは可能です。
まとめ
今回は、つば芯についてまとめてみましたが、いかがだったでしょうか?
つば芯は表には見えない黒子のような存在ですが、キャップ系の帽子のパーツの中では重要な要素の一つです。
イメージに合ったつば芯を使うことで、より理想に近い帽子が出来上がるかと思います。
いろんなつば芯があることを知っていただくことで、デザインの幅も広がるかと思います。
皆様のお役に立てれば、幸いです。
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